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注文住宅購入時の「手付金」とは?相場や支払いタイミング・払えないときの対処法も
公開:2025.10.11
注文住宅の購入を検討していると「手付金」という言葉を聞く機会が増えるでしょう。普段馴染みのない概念なので
- 支払うタイミングがわからない
- 相場がわからない
など、悩んでしまう方も多い印象です。この記事では、手付金の意味・支払うタイミング・支払えない場合の対処法などを紹介します。ぜひ参考にしてみてくださいね。
注文住宅購入時の「手付金」とは?
注文住宅の契約時には、売買契約や工事請負契約を結ぶ際に「手付金」を支払うのが一般的です。
手付金とは、契約の成立を前提に、買主が売主(またはハウスメーカー)に支払うお金で、契約の意思を明確に示す役割を持ちます。支払われた手付金は、最終的に建築費用の一部として充当されます。
ただし、手付金には契約の解除に関するルールがあります。買主が契約を解除する場合は支払った手付金を放棄し、売主側が解除する際は、手付金の倍額を買主に返還する「手付解除」と呼ばれる制度が適用されるのが一般的です。
また、手付金の金額は建築費用の5〜10%程度が目安とされており、たとえば4,000万円の注文住宅なら200万〜400万円ほどが必要になるケースもあります。住宅ローンの融資実行前に現金で支払う必要があるため、資金計画の段階から準備を進めておくことが大切です。
手付金の3つの役割
手付金には、契約時の前払い金という意味だけでなく、法律上3つの大切な役割があります。それぞれの役割を理解しておくことで、契約後のトラブルを防ぎ、安心して取引を進めることができます。手付金の種類は次のとおりです。
- 解約手付
- 違約手付
- 証約手付
ここからは、3つの手付金の役割について詳しく解説します。
解約手付
「解約手付」とは、契約後でも特定の条件を満たせば契約を解除できるようにするための手付金です。
買主が契約を解除したい場合は、支払った手付金を放棄することで、理由を問わず解約することができます。一方で売主が解約する際は、受け取った手付金の倍額を買主に支払うことで契約を解除できます。
ただし、この手付解除は契約書で定められた期日まで、または相手方が契約の履行(工事開始や引き渡し準備など)に着手する前に限られるため、注意が必要です。
売主が宅建業者である場合は、たとえ特約があっても相手が履行に着手するまでの間であれば、宅建業法に基づく消費者保護の観点から手付解除が可能とされています。
違約手付
「違約手付」は、契約後に一方が契約に違反(債務不履行)した場合の「違約金」として機能します。
違約手付は損害賠償とは別に支払われるもので、買主が契約違反をした場合は支払った手付金が没収され、逆に売主が違反した場合は、受領した手付金の倍額を買主に支払わなければなりません。
つまり、契約違反があった場合の金銭的ペナルティとしての役割を持つのが違約手付です。
証約手付
「証約手付」は、契約が正式に成立したことを証明するための手付金です。契約時に買主が売主へ手付金を支払い、売主が証約手付を受け取ることで、両者が契約の意思を明確に示したことになります。
この証約手付は、契約の成立を形式的・実質的に証明する「しるし」となるものであり、後から契約の有無についてトラブルになった際の証拠としても役立ちます。
手付金の金額相場は?
注文住宅を契約する際に支払う手付金は、建築費用の5~10%程度が相場とされています。たとえば、3,000万円の家を建てるなら、150万円〜300万円の手付金を支払うことが一般的です。
ただし、売主が不動産会社などの宅建業者の場合は、手付金の上限は売買価格の20%までと宅地建物取引業法で定められています。この点も踏まえたうえで、資金計画を立てましょう。
実際にどのくらいの金額になるのか、以下の表で新築工事費別に手付金の目安を確認してみましょう。
新築工事費の金額 | 手付金の金額相場(5~10%) |
---|---|
1,500万円 | 75万~150万円 |
2,000万円 | 100万~200万円 |
3,000万円 | 150万~300万円 |
4,000万円 | 200万~400万円 |
5,000万円 | 250万~500万円 |
手付金の金額は、売主・買主の合意で決定されるため、相場を参考にしながら無理のない金額で設定することが大切です。住宅ローンの融資実行前に現金で支払う必要があるため、資金準備も忘れずに行いましょう。
注文住宅で手付金を支払うタイミング
注文住宅を建てる際には、「土地を購入するタイミング」と「住宅を建てるタイミング」の2回に分けて手付金を支払うのが一般的です。それぞれの流れや支払いの注意点を、以下で分かりやすくご紹介します。
土地を購入するタイミング
土地の手付金は、売買契約を結ぶときに支払います。金額の目安は、土地価格の5~10%程度です。現金で支払うケースが多いですが、振り込みを求められることもあるため、事前に確認しておきましょう。
土地購入の主な流れは次のとおりです。
- 購入する土地を検討・選定
- 売主と売買契約を締結(このタイミングで手付金を支払う)
- 引き渡し時に残代金を支払う
たとえば、1,000万円の土地の場合、 契約時に50万~100万円を手付金として支払い、引き渡し時に残りの900万~950万円を支払うという流れになります。
住宅を建てるタイミング
建物については、ハウスメーカーや工務店と「建築工事請負契約」を結ぶ際に手付金を支払います。こちらは「契約金」と呼ばれることもあります。さらに、残代金は工事の進行に応じて数回に分けて支払うのが一般的です。
建物建築の主な流れは次のとおりです。
- ハウスメーカーの選定・建築プランの作成
- 工事請負契約の締結(契約金=手付金の支払い)
- 着工(着工金の支払い)
- 上棟(中間金または上棟金の支払い)
- 完成・引き渡し(最終金の支払い)
支払いの名称は支払時期によって異なります。
支払時期 | 名称 |
---|---|
請負契約時 | 手付金/契約金 |
着工時 | 着工金 |
上棟時 | 中間金/上棟金 |
引き渡し時 | 最終金/残代金 |
なお、支払い回数やタイミングはハウスメーカーごとに異なるため、契約前に確認しておきましょう。
手付金が払えない場合の対処法
注文住宅の契約時に必要な手付金は、原則として自己資金での支払いが求められます。しかし、急にまとまった現金を用意するのが難しいというケースも少なくありません。
そんなときでも慌てる必要はありません。資金調達や支払い方法の工夫によって、無理なく注文住宅を進めることは可能です。
手付金が払えない場合の対処法は次のとおりです。
- つなぎ融資を利用する
- 分割融資を利用する
- 減額交渉をする
- 親族から借用する
- 社内融資を利用する
それぞれの方法にはメリット・デメリット、注意点がありますので、自分の状況に合った方法を選びましょう。
つなぎ融資を利用する
注文住宅では、住宅ローンの融資が実行される前に「土地の残代金」や「建物の着工金・上棟金」など、まとまった支払いが必要になる場面があります。
このとき、自己資金でまかなうのが難しい場合に役立つのが「つなぎ融資」です。つなぎ融資とは、住宅ローンの実行前に必要な資金を一時的に借りる仕組みで、住宅ローンが実行されたタイミングで一括返済します。
つなぎ融資のメリット
- 無担保で借入できるため、担保設定などの手続きが比較的シンプル
- 引き渡しまでの支払いは利息のみで、家計への負担が軽減される
- ハウスメーカー提携の金融機関なら審査もスムーズなケースが多い
特に、土地購入後にすぐ建築を始めるようなケースでは、つなぎ融資があると安心です。
つなぎ融資のデメリット
- 金利が高めに設定されている(住宅ローンよりも高い傾向)
- 住宅ローン控除の対象外である(つなぎ融資期間中の利息は控除できない)
あくまでも「つなぎ」であり、住宅ローンとは別商品なので、金利や返済条件は必ず事前に確認しておきましょう。
分割融資を利用する
分割融資とは、住宅ローンを複数回に分けて実行してもらう融資方法です。注文住宅のように、土地購入と建物建築のタイミングが異なる場合に活用されることが多く、土地代と建物代をそれぞれのタイミングで住宅ローンから借りることができます。
つなぎ融資とは異なり、あくまで住宅ローンの範囲内での融資となるため、住宅ローン控除の対象になりやすく、金利も低めです。
分割融資のメリット
- 通常の住宅ローンと同じ金利で借りられる
- 条件を満たせば住宅ローン控除が利用できる
- 契約先が1つで済み、つなぎ融資に比べて手続きがシンプル
分割融資のデメリット
- 抵当権を土地・建物それぞれに設定する必要があるため、手間と登記費用がかかる
- 融資の実行が複数回になることで手数料が増える
- 建築プランや費用が固まっていないと審査が通らないこともある
特に土地購入と建物建築が年をまたぐ場合などは、初年度の住宅ローン控除が適用されないケースもあるため、資金計画は慎重に立てる必要があります。
自己資金が少ない場合や住宅ローン控除を確実に活用したい場合は、つなぎ融資との違いを理解し、早めに金融機関へ相談することが大切です。
減額交渉をする
つなぎ融資や分割融資を活用したとしても、土地購入時の手付金は原則として自己資金での支払いとなります。融資が実行されるのは契約後、引き渡しのタイミング以降になるため、契約時に必要な手付金を現金で用意できないケースもあるでしょう。
そのようなときは、売主やハウスメーカーに対して「手付金の減額交渉」を検討するのも一つの手段です。手付金も「上限」は宅建業法で定められていますが、「下限」は法律で定められていません。そのため、売主と買主の合意があれば減額することは可能です。
減額交渉の注意点
- 手付金は契約の安定性を担保するお金であるため、安易に減額を要求すると信頼を損ねる可能性があります。
- 一般的な相場(5〜10%)から大きく外れる金額を提示すると、売主側から不信感を持たれたり、契約自体を断られたりするリスクもあります。
- 減額交渉は、他の手段で資金を用意できない場合の最終手段と考え、丁寧な姿勢で話し合いましょう。
手付金が減額されることで、万が一契約を解除する際のハードルが下がるという点も踏まえ、慎重に対応することが大切です。
親族から借用する
手付金を自己資金でまかなえない場合、親や祖父母、親戚などから一時的に借りるという方法もあります。手付金は最終的に住宅ローンで支払う代金に充当されるため、住宅ローンの実行後に返済する前提で借りるのであれば、現実的な選択肢のひとつです。
ただし、金銭の貸し借りはたとえ親族間であってもトラブルを避けるために「借用書」の作成をおすすめします。
年間110万円を超える金額を無利子または返済の約束なしで受け取ると、税務上「贈与」と見なされるからです。贈与と認定されると、贈与税が課税される可能性があるため注意しましょう。
原則、年間110万円を超える贈与は贈与税が課税されますが、「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」も検討できます。
親や祖父母からの支援であれば、一定の条件がありますが、住宅取得等資金に関する贈与税の非課税制度を活用できます。
贈与を受けた人ごとに省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円までの住宅取得等資金の贈与が非課税となります。
※制度は年度により変更されるため、最新の税制情報を必ず確認してください。
社内融資を利用する
親族からの借入が難しい場合や、他の方法で資金調達ができないときは、勤務先の社内融資制度が利用できないか確認してみましょう。
社内融資とは、企業が福利厚生の一環として従業員に資金を貸し付ける制度で、主に大企業や公的機関で導入されていることがあります。
社内融資のメリット
- 一般の住宅ローンよりも金利が低めに設定されていることが多い
- 審査基準が比較的ゆるやかな傾向がある
- 住宅ローンの審査時に、借入ではなく自己資金として扱われる場合もあるため、資金計画上有利になることがある
そのため、住宅ローンの借入額を抑えたい場合や、手付金を一時的にまかないたい場合に、有効な選択肢となります。
ただし、近年は社内融資制度を廃止する企業も増えているため、まずは「社内規程」や「総務・人事部門」に問い合わせて制度の有無や利用条件、金利、返済期間などを確認しましょう。
社内融資は利用できれば非常に心強い制度です。見逃してしまわないよう、早い段階で確認しておくことをおすすめします。
手付金を支払う時の注意点
注文住宅の契約時に支払う手付金は、金額の大きさだけでなく、契約全体の流れやその後の住宅ローン審査にも大きく影響する重要な資金です。
「支払うタイミング」や「支払い方法」だけでなく、契約書の内容や解約時の条件などにも注意を払うことで、後悔のないマイホーム購入が実現できます。
手付金を支払う際に必ず押さえておきたい注意点は次のとおりです。
- 現金で用意する
- カードローンやキャッシングではお金を借りない
- 住宅ローン特約を確認する
- 手付解除できるタイミングを確認する
ここからは、手付金を支払う時の注意点について詳しく見ていきましょう。
現金で用意する
注文住宅を建てる際に発生する手付金は、原則として現金で用意する必要があります。特に、土地の売買契約時には住宅ローンの融資がまだ実行されていないため、自己資金からの支払いが必須です。
手付金の支払い方法は、契約内容によって現金の手渡しや振込などがありますが、いずれの場合も、あらかじめ現金を準備しておかなければなりません。
また、建物の工事請負契約時には、つなぎ融資や分割融資を活用することもできますが、土地契約の段階ではこうした融資はまだ使えないケースがほとんどです。
不動産は「頭金0円」でローンを組むことが可能な場合もありますが、「自己資金0円」では購入できないという点に注意が必要です。
現金の準備が難しい場合は、早めに営業担当や金融機関に相談して、別の資金調達手段(つなぎ融資・社内融資・親族からの借入など)を検討しておくと安心です。
カードローンやキャッシングではお金を借りない
手付金をどうしても用意できない場合でも、カードローンやキャッシングに頼るのは避けましょう。こうした借入は、住宅ローンの審査に悪影響を与えるリスクが高いためです。
金融機関は住宅ローン審査の際に、申込者の他の借入状況や返済能力(返済負担率)を細かくチェックします。
カードローンやキャッシングを利用していることがわかると「自己資金が不足している」「返済能力に不安がある」と判断され、希望の融資額が下りなかったり、審査そのものに落ちる可能性もあります。
また、金利も住宅ローンに比べて高いため、将来的な返済負担も増えることになります。
一時的な資金不足であっても、カードローン・キャッシングの利用は最終手段ではなく、避けるべき手段。代替手段としては、つなぎ融資や社内融資、親族からの借入など、審査への影響が少ない方法を優先的に検討しましょう。
住宅ローン特約を確認する
注文住宅の契約を結ぶ際には、住宅ローン特約(融資利用の特約)の有無を必ず確認しましょう。
住宅ローン特約とは、もし住宅ローンの審査が通らなかった場合に、契約を白紙解除できるという特約条項です。この特約があれば、ローン審査が否認されたときでも契約をなかったことにでき、支払った手付金も返金されるケースが一般的です。
住宅ローン特約が契約書に含まれていない場合、住宅ローン審査に落ちたとしても契約を解除できず、「手付金が戻ってこない」「契約だけが残ってしまう」「建築の中止ができない」といった重大なトラブルにつながる可能性があります。
契約締結前に、「住宅ローン特約が契約書にきちんと明記されているか」を必ず確認し、不安な場合は担当者や専門家に相談しましょう。
ローン特約の適用期限や解除の条件も契約ごとに異なるため、内容を読み込み、必要に応じて記載内容の修正や追記を依頼することも大切です。
手付解除できるタイミングを確認する
注文住宅の契約では、一定の条件を満たせば手付金を放棄して契約を解除できる「手付解除」が認められるケースがあります。ただし、手付解除できるタイミングには明確な制限があるため、事前の確認が非常に重要です。
一般的には、契約書に次のような条件が記載されています。
「〇月〇日までに解除した場合に限る」「相手方が契約の履行に着手するまでに限る」
ここで注意が必要なのが、「履行に着手する」とはいつのことかという点です。
履行に着手したとみなされる具体例
- 建築工事に必要な資材の発注
- 建築許可の取得や設計業務の開始
- 所有権移転手続きの開始 など
こうした行為が行われると、契約は「履行に着手した」とみなされ、手付解除ができなくなる可能性があります。この状態で一方的に契約を解除すると、損害賠償の対象となるリスクもあるため注意が必要です。
手付解除を検討する場合は、契約前に「解除可能な期限」や「履行着手の定義」について、契約書で確認し、担当者に説明してもらうことが大切です。
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注文住宅では、手付金の支払いや契約のタイミング、融資の手配など、検討すべきポイントが数多くあります。特に「自己資金の準備が不安」「手付金の相場がわからない」「契約内容に不明点がある」といった悩みは、多くの方が抱えるものです。
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